仕事の最中に、
夜の寒空の中
1人で外の落ち葉を掃除していた。
慣れない竹箒に悪戦苦闘していると、
「お疲れ様です。」
と声をかけられた。
(私に声をかけたのか、?)
と顔を挙げてみると
スーツ姿の男が立っていた。
少しスーツの着こなしがだらしない気がした。
(社内の誰かか?)
と思ったが、
いや、こんな人は見た事ない、、
そう思いながら
「あぁ!こんばんは!」
と返事を返してみた。
すると男は真顔で立ち止まり、
少し驚いた目でこちらをじぃ〜と覗き込んできた。
なんだか挙動不審だ。
恐怖を感じたが
(ど、どうも、、)
とこちらも戸惑いつつ会釈をすると
男は堰を切ったようにめちゃくちゃ早口で
「いやー、寒くなりましたね。あったかいのかと思ったらまたすぐ寒くなってほんと大変です。いやそれから〜〜〜」
聞き取らせる気の無いような早口で天気や気温の事をバーッと口にしながらそのまま歩き去っていった。
(なんだったんだ、、)
そう思いながら、また落ち葉を掃こうとすると、男がくるっと方向転換し、またこちらにズンズンと向かってくる。
「それじゃ、お疲れ様。」
これまた早口で、そう言って初め来た方向にまた戻っていった。
つまり僕の前を通り過ぎてUターンして、また来た道と同じ方に歩き去っていったのだ。
なぜ??
結局社内の人でも何でも無い人で、
会ったこともおそらく無い。
まぁまぁ怖い気持ちになった。
しかし、後になって考えてしまった。
怖い気持ちになるのは変ではないか。
シチュエーションだけ見れば、
『外で掃除をしていて、街の人に挨拶された。』
という何気無い事。
例えばそれがおばあさんだったらどうだろう。
「お疲れ様。いやー寒いねぇ。あったかくなったと思ったらまた寒くなって〜」
と話しかけられたらどうだろう。
きっとほっこりして優しい気持ちになるのではないか。
例えばカタコトの外国人ならどうだったろう。
「オツカレサマです!サムイなりましたね!」と
話しかけられたらどうだろう。
少し嬉しいと感じるのではないか。
ではなぜ僕はあの男に恐怖を感じたのだろう。
挙動不審だったから?
挙動不審だと思ったのは私の感想であり、本人は至って普通だったかもしれない。
つまりあの人の表情、服装、体勢、声の掛け方、
それらを総合してあの人が声を掛けてくる事に違和感を感じたのではないか。
例えば私が街に歩いていて、横にいる人に
「こんにちは。今日は寒いですね。」
と声を掛けたらどう反応されるだろうか。
僕は話しかけたら恐怖を感じられてしまうのだろうか。
それともギョッとされて無視されるだろうか。
それとも意外にも「そうですね。」とにっこり答えてくれるだろうか。
世の中から僕は『声を掛けてきても違和感がない存在』として見られるだろうか。
少し興味が出た。
あの時の声を掛けてくれたサラリーマン?の方、驚いてしまってすみません。
また会えたら是非挨拶して下さい。